追放シスターは王子の一途な恋に気づかない〜癒しの精霊師になったので今日もせっせと薬草茶を淹れます〜
「そろそろお茶が飲み頃です。どうぞ召し上がってください」
「いただこう」
ユースはカップに口をつける。
「んん!!」
途端にユースは唸った。
「これはすごく美味だ。ラベンダーの香りも芳醇な茶葉の香りも素晴らしい。ミルクの甘さが優しくて飲みやすい」
うっとりしたため息を漏らすユース。白い頬がほんのりと赤くなり、お茶で濡れた唇は実に艶美である。
目のやり場に困ったミアは視線を彷徨わせる。こんな色気のある表情を向けられたら落ちない娘はいない。本気になってしまう。
(も、もう。ユース様もお人が悪い)
これでも身の程をわきまえている。ミアは内心でため息を吐くと普段通りの振る舞いをした。
「喜んでいただけて光栄です」
お茶を飲み干したユースは「ごちそうさま」と言ってカップを返してくれる。
「アリエスとの絆が深まっているようだな。以前にも増して飲むお茶の効能が上がっている気がする」
「本当ですか? 嬉しいです」
「お陰で身体は疲れ知らずだし、集中力も続くようになった。魔力の質も上がっているのか、最近はルプの毛並みもいい」
精霊は特別な力を与える代わりに契約者の魔力を食べる。よって、その魔力を食べたルプにも影響が出たようだ。
「精霊師長とも相談したが、ミアには回復薬を作って貰いたい。……実は昨日赤い星が現れた」
「赤い星が?」