追放シスターは王子の一途な恋に気づかない〜癒しの精霊師になったので今日もせっせと薬草茶を淹れます〜

 通常、魔物の活動が活発になるのは盛夏。どこの国もこの時季は魔物に悩まされるが、赤い星が現れた年だけは初夏から活発になり、その数も増える。
 早めに対策をしなければ甚大な被害が出てしまう。そして魔物討伐において、回復薬は必要不可欠だ。

「ユース様、私は光魔法が使えませんよ?」
 回復薬を作るには光魔法が必要だ。こんな依頼をしてくるなんてどういうことだろうか。
 ミアが首を傾げていたら、ユースが肩に手を置いてくる。
「固定観念に囚われるな。ミアは精霊師として回復薬を作ればいい。君は癒やしの力が強い大地の精霊と契約しているのだから」

 ルビリア王国では、魔法師と聖職者によって結界が張られ、騎士団や傭兵が魔物を討伐する。負傷した者たちを癒やすのが聖女や聖女候補たちだ。
 一方でサフィン王国の魔物対策はルビリア王国とは少し違う。精霊師や魔法師によって結界が張られ、攻撃に特化している精霊師と騎士団が魔物を討伐する。
 救護は癒やしの力を持つ精霊と契約した精霊師が担当するようだ。

 精霊師長は癒やしの力を持つ水の精霊と契約しているが、アリエスの方が癒やしの力は強い。今回は魔物の数が多くなるのでミアの力を借りたいらしい。
「そういうことなら、これをお使いください」
 ミアは戸棚の扉を開け、黄金色の液体が入った大瓶と湿布を取り出す。
「これは?」
「以前、ユース様はアリエスの特性を生かせば個人の能力や状態を元に戻す、或いは最大限に引き上げられると仰いましたよね。それならお茶だけじゃなくて、薬も作れるんじゃないかと思ったんです」
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