追放シスターは王子の一途な恋に気づかない〜癒しの精霊師になったので今日もせっせと薬草茶を淹れます〜
修道女の時に回復薬を途中までしか作れないのがもどかしかった。自分に光魔法が使えたらと何度も思った。アリエスの特性を教えられた時から、ミアは回復薬のような薬は作れないかと試行錯誤を重ねていた。それがこの二つだ。
「この液体は回復薬と同じ効果があります。魔法が使えませんが魔力は込められるので、作った薬に込めてみたんです」
修道女時代に何度も作った回復薬。そこに光魔法ではなく魔力を込めると、回復薬と同じ黄金色へ変化した。
「薬に効果があるかは自分の指先を切って確認しました。傷口は塞がって血も止まったので討伐時に役立つはずです。もちろん、精霊師長様に鑑定をしていただかな……」
ミアが言葉を言い切る前に、ユースが手首を掴んできた。
「どこだ? どこの指を切った?」
形の整った眉を寄せ、余裕のない声で尋ねてきた。
ミアは戸惑いながらも答える。
「えっと。左の人差し指です?」
ユースはミアが作った薬にどれくらい効果があるのか確認したいらしい。ミアの手を自身の手のひらに載せてためつすがめつしてくる。
「信じられないのなら実演してみせましょうか?」
確信が持てるならと思い、ミアはナイフがある引き出しに手を掛ける。すると何故かユースはむっとした。かと思えば、不意にミアの指先にキスの雨を降らせてくる。
「へっ!?」
唇が触れる度にミアの指はジュッと焼けるように熱くなった。さらに青い双眸がこちらを捉え、視線を逸らせなくなる。
「今後、私の許可なく自身を傷つけることは禁止する。分かったな?」
「は、はい」
有無を言わせない口調のユースに、ミアは顔を真っ赤にして頷くことしかできなかった。