追放シスターは王子の一途な恋に気づかない〜癒しの精霊師になったので今日もせっせと薬草茶を淹れます〜

 ◇

「ヘルガさん、もっとたくさんの回復薬を作ってください。このままでは足りなくなります。魔物討伐が終わったとはいえ、負傷した者たちの傷を癒やさなくてはいけません」
「わ、分かってるわよ。すぐに作るから待っててちょうだい!!」
 ルビリア王国・王都のグランシア正教会にて。

 ヘルガは頭を掻きむしりながら、催促しに来た司祭に叫び返していた。
(どうして? どうしてどうしてどうして!!)
 あんなにロマ領では調子が良かったのに、ここへ来てから魔力の質が芳しくない。
 今回の魔物討伐で功績を残さなければ次期聖女になれないというのに。討伐中はいつもの半分にも満たない粗悪な回復薬しか作れなかった。
(どうして私の実力が発揮できないの?)
 ヘルガは自分自身に苛立ちを覚えて下唇を噛みしめる。

(それもこれもミアのせいよ。あの子がいなくなったせいで私の仕事量が増えてストレスになっているんだわ。忌々しい!!)
 ミアが教会を去った後、ヘルガは回復薬の途中までの工程を薬草園で働く修道女に任せていた。ところが、彼女はミアの十分の一も仕事がでない。

 結果的に、回復薬の全工程を自分でやらざるを得なくなっている。
 面白くないことはまだある。ミアが泣きついて来ないところだ。
(泣いて許しを求めてきたら、許す代わりにこき使おうと思っていたのに。面白くないわ)
 悪態を吐いていたら、居室に聖女が聖騎士を引き連れてやって来た。
< 40 / 49 >

この作品をシェア

pagetop