追放シスターは王子の一途な恋に気づかない〜癒しの精霊師になったので今日もせっせと薬草茶を淹れます〜
「ヘルガ、取り込み中だろうけど少しいいかしら?」
ヘルガは慌てて楚々とした態度になって一礼をする。
「聖女様、いかがなさいましたか?」
天使のような微笑みを浮かべてみせると、聖女が穏やかに笑い返してくれた。
「実はサフィン王国から使者が来られているのです。こちらの被害が大きいのを危惧してたくさんの物資を持って来てくださいました。教会の聖女候補としてあなたも会談に出席してください」
サフィン王国はルビリア王国と違い、精霊師という不思議な者たちによって国が守られている。今回の魔物討伐で被害が少なかったのは、かの国に癒やしの精霊師が誕生したからだと風の噂で聞いていた。
「わたくしは体調が優れないので出席できません。二人の聖女候補同様、よろしく頼みますよ」
「はい、お任せください」
ヘルガは天にも昇る気分になった。会談となればもちろん上流階級が集まる王宮へ参上することになる。身分の高い男たちにちやほやされたいヘルガだ。行かないわけがない。
(ふふ、他の候補よりも美しく着飾らなくちゃねえ)
ヘルガはこれから向かう王宮に思いを馳せたのだった。