追放シスターは王子の一途な恋に気づかない〜癒しの精霊師になったので今日もせっせと薬草茶を淹れます〜

 ルビリア国王に挨拶を終えたユースは、背後にいた文官へ目で合図を送る。文官は大事そうに何かを抱え、前に進み出た。
「魔物討伐での被害が大きかったと聞き、薬をお持ちしました」
「癒やしの力を持つ精霊師が誕生したそうだな。我が国の聖女にも匹敵する程と聞いているが本当なのか?」
「事実でございます。私の隣にいる彼女こそ、その精霊師です」
 ユースに紹介されたミアは、スカートを持ち上げて挨拶する。

「はじめまして。サフィン王国の精霊師が一人、ミア・クレイが陛下に挨拶を申し上げます。負傷者の皆様の回復を願っております」
「彼女の薬は癒すのみならず、個人の力を最大限に引き上げる効果を持っています。きっとお役に立つでしょう」

 ヘルガはユースの話にもしやと思った。ミアがいた頃の自分はいつも魔力が豊富で、質も高くて調子が良かった。
(私の魔力の質が向上していたのは、ミアのお陰だった? なら今の私が普通の状態ってこと? もしそうなら……)
 すべてを悟ったヘルガは呆然とした。ミアがいなければ自分は到底聖女に選ばれない。
 ヘルガは震える拳を握り締める。
(ありえない、ありえないわ。私が聖女になれないなんて。それどころかミアが聖女と同等? 笑えない冗談だわ!)
 ヘルガは奥歯を噛みしめてミアを睨んだ。
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