追放シスターは王子の一途な恋に気づかない〜癒しの精霊師になったので今日もせっせと薬草茶を淹れます〜
会談が終わり、部屋に通されたヘルガだったが居ても立っても居られなくなってミアを探した。迎えの馬車が来たら、ヘルガは他の候補者と一緒に教会へと戻らなくてはいけない。そうなったら二度とミアとは会えなくなる。
渡り廊下を通って探していたら、中庭にぽつんと一人で立っているミアを見つけた。
(いたわ!)
ヘルガはミアの後ろ姿に向かって走った。ミアを連れ戻して側に置こう。そうすればまた前のように素晴らしい光魔法が使えるようになるし、聖女にだってなれる。
「ミッ……」
すると突然、目の前に風の壁が現れて行く手を阻まれる。いくらミアの方へ進もうとしても壁の妨害を受けて押し返された。
それどころかいつの間にか足首には地面から生えた蔦が巻き付いていて身動きが取れない。
「放しなさい。私はミアの主人よ!!」
憎たらしい蔦に向かって叫んでいたら背後から声がした。
「誰がミアの主人だって?」
振り返れば先ほどの青年がヘルガの前に姿を現す。間近で見るとため息が出るほど艶美で、思わず感嘆の声を上げてしまう。しかし、それも一瞬だった。何故ならユースは口元を歪めているのだから。
「たかだか聖女候補が、精霊師である私の妻を愚弄するな」
「妻?」
ミアがユースの妻。平民が王族と結婚するなんてありえない。何かの間違いに決まっている。
ヘルガは乾いた声で笑った。