追放シスターは王子の一途な恋に気づかない〜癒しの精霊師になったので今日もせっせと薬草茶を淹れます〜
(まあ、迎えに行くなんて息巻いて、結局私は魔力過眠症で倒れてしまったが)
ミアは自分を二度も救ってくれた。
昔と髪色が変わってあの時の少年が自分だと気づいてもらえなかったけれど。再会してミアが白蝶貝の髪留めを大事に付けてくれているのは嬉しかった。
(白蝶貝の髪留めを付けてくれているのは嬉しいが、そろそろ上等な品を贈らなくては)
ユースが決意を固めていると、部屋の扉が開いてミアが入ってきた。手にはポットが握られている。
「女官長からお湯をいただきました。今日はどんなお茶を淹れましょうか?」
昔と変わらない優しい笑顔でこちらにやって来るミア。
ユースはソファから立ち上がると蕩けるような瞳で見つめ、ミアに近づく。ユースは後ろからミアの細い腰に手を回した。
「わ、危ないです。火傷すると大変なので離れてください。それと質問に答えてください!」
ミアの身体が熱くなるのを肌で感じる。それが嬉しくてユースの表情がへにゃりと崩れた。火傷どころか、もう自分の心はミアでぐずぐずに溶けている。
ユースはミアの耳元に顔を近づけて低い声で囁いた。
「どんなお茶でも歓迎する。だって、ミアの淹れるお茶はいつだって特別だから」