追放シスターは王子の一途な恋に気づかない〜癒しの精霊師になったので今日もせっせと薬草茶を淹れます〜
アリエスは大体朝にここへやって来る。その時に必ず薬草園にはないような薬草を届けてくれるのでミアは非常に助かっていた。
(なんといってもこのフォルムが最高に可愛いのよね)
ミアが両手を広げれば、アリエスは素直に胸に飛び込んでくる。それがまた堪らなく愛おしい。
柔らかな体毛に癒やし系の顔をしているアリエスは、ミアの疲弊した心に栄養を注いでくれた。
『メェ~』
不思議な話だが、ミアはアリエスが何と言っているのか分かる。アリエスという名前も精霊であることも彼が教えてくれたのだ。また、他の人にはアリエスの姿は見えない。
昔、一度だけ父にアリエスと話しているところを見られてしまったが、気持ち悪がられてしまった。
その一件以来、ミアは人前で話さないようにしている。だが、今は誰もいないので存分に話し掛けた。
「アリエス、大変なの。あと二時間でここにある魔法石に魔力を込めなきゃいけなくて」
『メェ〜』
「応援してくれるの? ありがとう」
『メメェ~』
「だいじょうぶ。私、がんば、る、から……」
アリエスの鳴き声を聞いていたら、急に眠気に襲われて頭がぼーっとしてくる。
頑張らなくちゃいけないのに瞼が鉛のように重い。
「ねちゃ、だめ、なのに……」
ミアの意思に反して、瞼はすっと下がっていった。