追放シスターは王子の一途な恋に気づかない〜癒しの精霊師になったので今日もせっせと薬草茶を淹れます〜

第2話 理不尽な追放


 背中に鈍い痛みを覚えて意識が浮上する。
(どこで寝ているの?)
 実家のベッドも教会で使っているベッドもここまで固くない。ゆっくりと目を開けば、そこは工房だった。
「……床で寝てたの?」
 どうして?と疑問符が頭に浮かんだものの、すぐに状況を理解した。
「やってしまったわ!」

 ミアは飛び上がるように起き、両頬に手を添えて青ざめる。大幅なロスタイム。これでは約束に間に合わない。
 すぐに立ち上がり、魔法石があるテーブルへと身体を向けた。
「全部、魔力補充されてる?」
 テーブルの上を確認すると、残っていたはずの魔法石すべてに魔力が込められている。
 魔法石は一つ一つ色が違う。色とりどりの魔法石が夜空の星々のように煌めいていた。
 壁掛け時計を見たら、ヘルガとの約束の時間まで二十分ほど残っている。
「どうなってるの?」
 ミアが呆然と立ちすくんでいると、どこからともなく薬草を咥えたアリエスがやって来た。ミアが両手を差し出せば、アリエスは咥えていた薬草を手のひらに置いてくれる。
 それはリンデンだった。

『メェ~』
 早くお茶の準備をしないとヘルガに怒られると言っている。
「そうね。急いで準備をしないと。ところで、魔力補充はアリエスがやってくれたの?」
 問いかければ、アリエスはそうだと鳴いた。まさに救世主である。
 アリエスの優しさにミアは感激した。
「うう、ありがとう!」
 アリエスをぎゅっと抱きしめて頬ずりする。ふわふわの毛が肌に触れてくすぐったい。
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