冷たい彼と熱い私のルーティーン
春野さんと私は背中合わせの席に座っている。彼は寒がりなのか夏でもスーツの上着を着ていて、ワイシャツ姿を見たことがなかった。ちなみに私は暑がりなので、夏はノースリーブ、冬は半袖ニットか薄手のブラウスで過ごしていた。
春野さんはIT課のヘルプデスクを担当していて、一日中社内からかかってくる助けを求める電話に答えている。
その電話への答え方がいつも冷たくて、自分が言ったIT用語を相手が理解出来ていない様子だと向こうをバカにするような口調で説明したりするので、冷たくて感じの悪い人だな、と思っていた。見た目は整っているし仕事も出来るんだろうけれど、極力関わりたくなかった。
それなのにあの日から毎日、私は彼の静脈認証に文字通り手を貸すことになってしまった。それが終わると私が先に立って席に向かい、すぐ後ろから彼がついてくる。
お互い挨拶もしない、彼がお礼を言ってくることもない、無言で行われる朝のルーティーンだった。
春野さんはIT課のヘルプデスクを担当していて、一日中社内からかかってくる助けを求める電話に答えている。
その電話への答え方がいつも冷たくて、自分が言ったIT用語を相手が理解出来ていない様子だと向こうをバカにするような口調で説明したりするので、冷たくて感じの悪い人だな、と思っていた。見た目は整っているし仕事も出来るんだろうけれど、極力関わりたくなかった。
それなのにあの日から毎日、私は彼の静脈認証に文字通り手を貸すことになってしまった。それが終わると私が先に立って席に向かい、すぐ後ろから彼がついてくる。
お互い挨拶もしない、彼がお礼を言ってくることもない、無言で行われる朝のルーティーンだった。