極愛〜狙われたら最後〜
店の外からチラッと中を覗けば雫は野暮ったい制服のまま酒を飲んでいた。

クククク。
本当だ。
あれじゃぱっと見ただけじゃわかんねぇな。

中に入って雫の座る席から二つ開けた椅子に座る。

マスターに酒を注文しタバコに火をつけた。

おお。気づいたな。
ミラーをそっと出して後ろを確認している。

なかなか安易に近付けなかった俺が一人でこんな所に現れたから驚いてるようだ。

「なんだ最近うろついてるネズミじゃないか」

俺は笑って見せる。

「用があるなら言えよ。それともまたヒールが折れるのを待つか?」

雫はまさかバレていると思ってなかったようで目を大きく開ける。

「ずいぶんと大人しいな。鈴木雫」

俺は立ち上がり席を詰めて隣に移り耳元に口を寄せた。

「違うか。"S" だったな」

そう言ってニヤっと笑えば、彼女の顔から血の気が引いていく。

そうだよな。
バレたら組織に殺されるからな。
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