極愛〜狙われたら最後〜
「龍臣…」
相変わらず風邪を引いた老犬のようなしゃがれた声で龍臣の名前を呼ぶ。
が、全く起きない。
いやいや、爆睡かぁ?
嫁が起きたぞー。
こういう時はだいたいすぐに気が付いて感動の涙の再会みたいな感じになるんじゃないの?
でもこの男はさっぱり気づかずに寝ている。
それは幸せそうな顔で。
なんの夢を見てるんだか。
ふふふ。まぁいいか。
私ももう少し寝ようかな。
そして顔だけ動かして窓の外を見てみる。
澄んだ青空に白い雲がところどころにあって、燦々と降り注ぐ太陽の光を浴びて小鳥たちがさえずり、草木の周りを歌うように飛んでいる。
なんて爽やかな目覚めだ。
そしてもう一度龍臣を見る。
ん?
私の手を握る手と反対側に何か紙のような物を握りしめている。
それをスルっと取ろうとするとギュッと握りしめて、これまで全然起きなかった龍臣がガバっと顔を上げた。
「雫! 起きたか!」
ははは。
なんか思ったより元気そう。
心配性の龍臣の事だからテンションが下がってるかと思ったけど。
私はニコッと笑う。