極愛〜狙われたら最後〜
車を出ると、何十人もの組員が整列して出迎える。

龍臣は私の腰に手を添えてゆっくりと歩幅を合わせるように歩き出した。

一瞬ザワつくもすぐに大人しくなった。

龍臣を見上げれば見たこともないような険しい顔をしていた。

「「おかえりなせぇまし」」

声を揃えてビシッと頭を下げる組員の間を通り抜ける。

玄関までつくとまたザワザワと騒ぎ出した。

「チッ。一度親父の所へ行く」

龍臣はいつもより硬い口調で話す。

「龍臣。私はあなたのものよ? 私にはそんな顔しないで」

そっと龍臣の頬に触れる。
龍臣は一瞬目を開き、そしてフッといつものように柔らかく笑った。

「そうだな」

そして私の手を取り手の甲を自分の口元に持っていきキスを落とした。

それを見ていた組員たちがまた騒つく。

「行こうか」

今度は気にしない事にしたようだ。

「ええ」

私もにこやかに微笑む。

ったく。
私にまで怖い顔で話されたんじゃ妻のフリしてたってダメでしょ。

何で私がこんな事までフォローしなきゃなんないのよ。
< 65 / 268 >

この作品をシェア

pagetop