極愛〜狙われたら最後〜
「親父。若と姐さんが到着しました」

将臣さんが襖の前で中に声をかける。

「入れ」

中からドスの効いた低い声が聞こえてくる。

私は龍臣を見上げる。
コクっと頷く龍臣。

そして目を伏せたまま龍臣の後ろに着いて行き、敷かれた座布団の横に座った。

「雫さんだね。かけなさい」

低い声。
ビリビリと鼓膜を通して全身に行き渡るような威圧感。

ここでしくじったら水の泡だ。

「先にご挨拶させてください。龍臣さんの妻となりました雫と申します。ご挨拶が遅くなり申し訳ございません」

そう言って私は更に頭を下げた。

「ははは。いいね。顔を見せてくれないか」

私はそっと顔を上げる。

声色とは裏腹に、龍臣とそっくりな顔をして私を見て微笑んでいた。

「ほら、掛けて」

龍臣も僅かに微笑み私を見て頷く。

「失礼します」

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