極愛〜狙われたら最後〜
本心で言ったわけじゃないのはわかる。
これはお互い夫婦のフリをしているだけなんだから。
「龍」
私は名前を呼ぶ。
今は七瀬龍としてここに立っているはずなのに、さっきの顔は完全に八神龍臣になっていた。
そして、さっきのあの表情が切なくて何故か寄り添いたくなってしまった。
私は龍臣の手を取りキュッと握った。
「早く帰って可愛がって」
気づけば私の口はそんな事を言っていた。
龍臣は私をジッと見下ろす。
シルバーフレームの下にある漆黒の瞳が揺れて、まるで私の真意を探るように射抜かれる。
「そうしよう」
その瞬間、その瞳の奥がギラっと光り腰を引き寄せられ熱のこもった瞳で見つめられた。
キスされる。
そう思って私も目を閉じてしまう。
「CEO。送ります」
その時将臣さんが声をかけてきて私はハッとして閉じていた目を開けた。
私今なにを…
自然と受け入れようとしたそんな自分に戸惑う。