極愛〜狙われたら最後〜
気づいてたの…?

私はグッとナイフを握る手に力を込める。

これはチャンスよ。
ひと突きで仕留めて…

なのに手が震えて動かす事ができない。

殺れ。
殺るのよ!

自分の手に何度も何度も命令する。

それでも動かない私の手…

どうして動かないのよ!

そして私はようやく気づいた。

絶対に愛してはならないはずの彼を…愛してしまっている自分に。

「ほら、殺るんだ。早く!」

大声で怒鳴る龍臣。

私は小さく首を横に振る。

「……ない」

「雫!」

「できないっ!」

龍臣は私の手を握ったまま首に刺そうと力を込める。

「雫。愛してる」

龍臣の首からツーっと一筋の鮮血が流れる。

「嫌だ! やめて…、やめてっ…龍臣っ…」

私はその手を泣きながら必死に止めるように引っ張る。

「龍臣っ! お願い…もう…やめて…」
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