バンドマンの彼氏。

sena視点


「うん、もう大丈夫ですよ」


医師の許可がおり、帰れることになった。


「あのね、陸斗...」


あたしはフラッシュバックの原因、旦那の話を始めた。

結婚してすぐに妊娠した。

つわりが酷くて、2、3ヶ月吐き続けた。

家事できないどころか、ベットから起き上がれない。

トイレに行くのがやっとだった。

最初は優しかった旦那も、お弁当も作ってくれない、仕事から帰ってきてもご飯ができてない、洗濯も溜まっていく。

そんな何もできないあたしに愛想尽きたのだろうか、冷たくなった。

つわりが落ち着いて安定期に入った。

家事もできるようになった。

旦那はまた前の優しい人に戻った。


「なぁちょっとぐらい...」

「ダメだよ」

「なんだよ」


あたしは求められてもお腹の赤ちゃんのことを考え、断り続けた。

するとしばらくして、旦那の帰りは遅くなった。

旦那のスーツからはいつも女の香水の匂いがした。

きっと風俗かデリか...

いや、浮気でもしてるんだろう。

今あたしはできないから仕方ない、そう自分に言い聞かせた。

そしてついに出産。

やっと月夢に逢えた。

ずっとこの日を待ってた。

旦那も涙を流して「ありがとう」と言ってくれた。
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