悪役令嬢に剣と花束を


 5日間の公務が終わって、帰路のなか国境を超えたあたりで3回目のただならぬ視線を感じた。


「敵襲です!?」

「まーたお前か……」


 荷馬車から飛び出して警したが、皆、白い目を向けられた。それどころか馬車を止めてくれない。


「それ以上進むのは危険です」

「はいはい」


 その直後、トトトっと大量の弓矢が箱型馬車と荷馬車を襲われ、ほとんどの者が命を落とした。


 森のなかへ飛び込み、道に沿うように駆けて潜んでいた弓兵を斬っていく。


 炎の矢が飛んできた。数条の赤い軌跡がコチラへ飛んできたかと思うと、茂みに潜んでいた伏兵に突き刺さった。


「レイシア様!」

「私をおぶって(・・・・)走ってッ!?」


 箱型馬車の方は外装を金属で補強されたので、矢が通らなかったようだ。レイシア嬢が馬車から飛び出し、背中へ飛び乗ってきた。


 全力で駆けると追手をみるみる引き離し、痕跡が残らないよう細工して、追跡が困難になるよう工夫した。


「ここまできたらしばらくは大丈夫」


 ようやくレイシア嬢を背中から降ろしたボクは一息ついた。


 すり鉢状になった岩山の途中なので、周囲から発見されにくく、ゆっくり休めると考えて問題ない場所をみつけた。


 日も暮れかけていて、もうすぐ真っ暗になる。追手に場所を気取られないためにも火を起こすこともできないので、こういった安全な場所を見つけられてホッとした。






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