悪役令嬢に剣と花束を
「侵入者だ!」
「こ、こっちに来……ぐはぁッ!?」
バゲイラの屋敷に忍び込んだまでは良かったが、番犬に吠えられ、バレてしまった。やむなくボクは強行突破に移り、窓を割って屋敷の中へ侵入した。歯向かってくる者を全員斬り捨てながら進む。
バゲイラの私室と思しき部屋の中へ入ると本来、本棚のうしろに隠されているだろう隠し通路の扉が開いていたので駆け足で階段を下りた。
「そこを動かないでもらおうでゅふ」
「……」
「そうだ小僧、おとなしく言うことを聞くでゅふよ、ぐふふふっ」
地下室に到着して一瞬で状況を把握する。三日月型の刃物をレイシアの首に当ててコチラをけん制するバゲイラがいる。でも他に気配はない。
「いぎぃッ! ひぃぃ~~ッ」
バゲイラの手の甲へ黎力で作った投剣を飛ばし手の甲を突き刺した。バゲイラの手から三日月の刃物が零れたところに剣の柄で思い切り殴ってレイシアから引き剥がした。
「ま、待つでゅふ、この国と戦争になってもいいでゅふヵ?」
「さぁね」
「ぴぎゃッ」──奇妙な叫び声がバゲイラが発した最期の言葉となった。ボクはレイシアの拘束具を断ち切って彼女を背負い、再び階段を駆け上がる。
途中で出くわした連中も全員斬り捨て、館を出て、塁壁の上から水堀へと身を投じた。