Secret Baby
 涼はそう言ってくれるが、数少ない大切な人たちに、いつも気を遣わせてばかりいる自分が嫌い⋯⋯。
「私、そろそろ行くね」
「えー、もう帰っちゃうの?私が変なこと言ったから⋯⋯?」
「お馬鹿さんね。そんなわけないでしょ。おばあちゃんもトシだし、夕飯の支度を手伝わなきゃ。じゃあ、またね」

 すぐ隣の自宅に帰ると、母は先に帰宅しており、夕飯も出来上がっていた。
「ただいま。ごめん、遅くなった」
「おかえりなさい。メルが遅くなるって珍しいわね」
 実年齢よりも、やや年上に見える母が言う。
「うん。お隣に寄ってたから。あ、由紀さんがお土産にフィナンシェくれたよ」
 母と由紀さんは同い年だが、由紀さんがあまりにも若々しく、美人ということもあり、余計にくたびれて見える。
 由紀さんならば、美容に時間もお金も使うことができるだろうけれど、母には⋯⋯。
 だからこそ、私が頑張らなければ。
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