Secret Baby
 隣の立派な家からは、自分と同じぐらいの年頃の二人の子供が、私のことをじっと見ていたので、
「どうしたの?」
 そう声をかけると、二人は驚いた様子で、
「喋った!」
「日本人だ!」
 そんな当たり前のことを言うではないか。
 しかし、当時は私のほうがわかっていなかったのだ。
 自分ではそう思わなかったが、傍目には日本人に見えないということを。
 隣の家の子供というのは、涼と萌子のこと。二人とは、すぐに打ち解けた。
 二人とも、基本的な性格は昔から変わっていない。しっかり者のお兄ちゃんと、甘えん坊の妹だ。
 学校でも、家でも一緒に過ごすことが多く、母が遅くまで働いているので、由紀さんか祖母が、私たち三人の面倒を見ていてくれた。
 だから、母の帰りが遅くても、淋しいのなんのと思うこともなく、幸せな子供時代を過ごすことができた。
 本当に幸せな日々だった⋯⋯。
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