Secret Baby
 萌子が私の両腕をブンブン振って言う。
 この双子の家には、ホームシアターがあり、好きな映画を好きな時に、大画面で観られる。
 なんとも羨ましい話だ。
「萌もそう言ってるんだしさ」
 涼の言葉に、
「じゃあ、お邪魔しようかな」
「やったー!なんか久しぶりよね!あとさ、英語の課題、教えてくれない?」
 そう言われても、高卒の私に大学の英語の課題がわかるだろうか?
「課題ぐらい自分でやれよ。メルは仕事から帰ってきて疲れてるんだぞ」
 涼が間髪入れずにフォローしてくれた。
 双子とはいえ、やっぱり涼はお兄ちゃんなんだなと微笑ましく思う。
 私は一人っ子である。本当は、何人かきょうだいが居るようだが、顔も名前も知らないし、向こうも私のことは存在すら知らない。
 血縁こそないが、お隣の大和田家の双子のほうが、よっぽど近い存在だ。
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