護国の聖女でしたが別人にされて追放されたので、隣国で第二の人生はじめます!
一章 第二の人生を謳歌したい

虐げられる護国の聖女

 エリアナ・グリーンはナンザイ王国国境にある塔の頂上に佇んだ。
 風に流れる銀糸のような髪、太陽の光を映したかのような金色の瞳、清らかな水のように美しく透明な魂を持つ。神に愛されている歴代最高の護国聖女だ。

「ここもずいぶん汚れてしまってるわね」

 彼女の眼前にそびえているのは、護国の結界石柱。
 天に向かって伸びる、この大きな柱のような石は王都からエリアナが放つ聖なる防護膜を支える役目を持つ。
 本来ならば透明な輝きを放つのに、今は黒く澱んでいる。三か月前に浄化したばかりなのに澱みがひどい。
 このままでは結界がうまく働かずに隙間ができ、悪いものが国の中に入ってきてしまう。

「聖女さま、さっさと仕事をしてください」

 後ろから、言葉は丁寧だけれど苛立っている声が飛んできた。

「わかっています」

 背後では三人の神官が控えていて、浄化を手伝うわけでもなく、エリアナを見守っている。
 いや、彼らのにらむような眼差しは見守るというより、見張っているというほうが正しい。
 エリアナが悪いことをするわけでもないのに、今日は少し疲れていると伝えただけで、あのような態度になっているのだ。

 エリアナはすぅっと息を吸い込み、バッと両手のひらを石柱に向けて祈りを込める。瞬時に手のひらから聖なる力が放たれた。
 ぱあぁぁっと、金色に輝く光が石柱の中に吸い込まれるように入っていく。石柱の中では金色の光に黒い澱みが取り込まれて消えていき、最後にひときわ大きな光を放つ。クリスタルの輝きを取り戻し、陽の光にきらりと光った。

 エリアナは疲れを感じて、ふぅっと息をつく。
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