護国の聖女でしたが別人にされて追放されたので、隣国で第二の人生はじめます!

『目覚めたとき、ここでのことは忘れておろう。じゃが時が来れば思い出すゆえ心配いたすな。これからの悪の力を破壊しまくる人生、とくと楽しむがよいぞ!』

 にこにこと笑って手を振るアクエラの姿が遠ざかっていった。

「……『そうじゃ。わらわの神獣たちに会ったら、かわいがってくれ』が、最後のお言葉でした。そして意識がはっきりしたのは追放された日だったのです」

 話を終えて場が静まり、最初に声を出したのはルードリックだった。

「エリアナは神に愛されているのだな」
「皇都に滞在しているうちに、魔術師部で力の分析をしようとしてましたが不要ですね。まさか神の権能とは……」

 トーイが呆然としている。

 ──私もびっくりです……。

 力を使っている自覚がなかったのは、息をするように解呪しまくっていたからだ。
 痛みを感じるのは破壊していたからか。
 そういえば『ちょ~っと痛いが、解呪の実感がわくからよいぞ』と言っていたような気もする。
 実感はいいけれど、もう少しましな方法が良かった。

「王国が追放してくれて、そして帝国に来てくれてありがとうと言うべきですね」

 マクスがぐっと親指を立てた。

「しかし、なんとも人間味のある神でしたね。爽快、とは」

 ラベル宰相が笑いをこらえ、陛下がぷっと噴き出し、「ナギの解呪は確かに爽快だったな」と愉快そうに声を立てて笑う。

「エリアナを帝国の民として歓迎し、ワノグニー唯一の解呪師として承認しよう。そのうえで改めてアカデミーの仕事を依頼する。引き受けてくれるか?」

 元聖女の解呪師・エリアナの誕生である。

「陛下、謹んでお引き受けいたします」
「頼んだぞ。潜入の詳細は追って連絡する。守護獣の解呪、まことに見事だった。このあとはゆるりと休め」

 陛下は名残惜し気にしているスサノーンをエリアナから引きはがして執務に戻り、エリアナたちは滞在するパール宮殿に移動した。

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