護国の聖女でしたが別人にされて追放されたので、隣国で第二の人生はじめます!

ルードリックの初デート


 皇宮滞在二日目。今日はエリアナと街に出かける日だ。約束の時刻を前にルードリックは待ち合わせ場所に向かった。

「殿下!?」

 エリアナが驚愕している。

「どうしてですか!?」

 両手で頬を包んで青ざめてしまった。護衛についているマクスも困惑した表情だ。
 そうだろう。ルードリック本人も驚いているのだから。

「呪いの後遺症なのか。妙な魔力を得てしまったようだ」

 ほんとうに妙な感覚だった。

 昨日のことだ。
 パール宮殿に与えられた部屋で、ルードリックは自分の手を見つめた。
 全力解放して暴れまわる黒獅子を制御したあと、なにか別の力を授かったような心地がしていたのだ。

『主、擬態できる。念じれば小さい姿になる』

 ナギュルスからの念話を受けて試したところ、自在に子ども化できるようになっていた。
 ちまっとした手を見て「これは、ちょっと便利だな!?」と喜んでしまったのは、面倒なことから逃れられるからだ。
 それと極秘捜査の際などに敵の目を欺くこともできる。
 そう、それだけのこと。
 決してエリアナと手をつなぎたいわけではない。

「驚かせてすまない」

 苦笑しつつ説明し、エリアナの手に触れた。

「ほら、元に戻らないだろう?」
「よかった……もうっ、びっくりさせないでください! でも、小さな殿下はかわいらしいので許しちゃいます」

 不敬だと叱らないでくださいね、とくすくす笑う。

「恩人にそんなことはしない。出かけようか。まずはどこに行きたい?」

 馬車に乗り込みながら問うと、エリアナはぐっと拳を握った。

「それはもちろん、季節限定スイーツのお店です!」

 エリアナの目がきらきらとしている。

「私がご馳走しますからね」

 ドヤァっときんちゃく袋を見せる彼女は、人生初めての街歩きらしい。
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