護国の聖女でしたが別人にされて追放されたので、隣国で第二の人生はじめます!
正直いってスイーツには興味ないが、幼児のときはおいしさを楽しめる。知らずに退屈そうにして彼女をがっかりさせることもない。
「そうか。期待している」
ルードリックにとっては、女性との初お出かけである。
『デートだな』
ヘイブンがずばっとほざいたが、『からかうな』と返しておいた。幼児の姿で出かけていると知れば呆れた顔をするだろう。
子ども化解呪のお礼としては足りないが、今日はエリアナが楽しめるように思う存分に付き合うつもりだ。
皇宮を出た馬車は進み、目的の場所に着く。道中もエリアナはワクワクした様子で窓の外を眺めていた。
「殿下、早く行きましょう! 並ぶのはあちらみたいです」
最後尾の看板を持った人を指し、エリアナが自然に手を握ってきた。毎日手をつないでいたというのに、心がくすぐったいような不思議な感覚がする。
「並ぶ必要はない。実は予約しておいたんだ」
戸惑っているエリアナの手を引いて店員に予約の旨を伝えた。
店内は女性の姿が多い。甘い匂いと話し声が苦手で、大公姿では絶対に入らない店だ。
男性連れは恋人か婚約者だろうか。互いに熱い視線を送りあっている。
こちらは装飾を控えた服を着ている幼児とエリアナとマクス。はたから見ればごく普通の家族だろう。誰も気に留めない。
案内された席はテラスだった。
ほかの席は一つだけで客はいない。予約時に水入らずで楽しめるよう希望したからずっと空席のはずだ。
──かなり離れているから、万が一ほかの客が来たとしても、それなりにゆっくりできるだろう。
立ったままでいようとするマクスを席に着かせ、メニューを見つめるエリアナの目が真剣だ。
「殿下、どうしましょう。限定スイーツが五種類もあります」
「ならば、全部頼めばいい。きみが三つ、俺とマクスが一つずつ食べればいいんだから」
「三つも! そんな贅沢、いいのですかっ」