護国の聖女でしたが別人にされて追放されたので、隣国で第二の人生はじめます!
帝国アカデミー上級子息篭絡事件・その一・潜入
アカデミーへの潜入準備が済み、いざ出陣の日。制服を着たエリアナはマクスと一緒に馬車に乗り込んだ。
アカデミーは試験に合格すれば平民も入学できるが、寮費と学費が高額のため大半の生徒が貴族子女だという。
二人はアルディナルからの短期留学生として入ることになり、マクスは公爵令息、エリアナは伯爵令嬢の身分という設定だ。
グレッタ男爵令嬢とは同じクラスになる予定である。
皇子殿下たちは生徒会に所属しており、グレッタは役員でもないのに頻繁に出入りしているとのことだった。
どんな呪物を使用しているのか、もしくは本人が呪術師なのか不明のため、それを調べるのが先決だ。
「簡単にわかるといいのだけど」
「エリアナさまならすぐに判別できますよ」
自信を持たせてくれるマクスの耳には呪術よけのピアスが光っている。
これは城の魔道具師が細工した魔石にエリアナが力を込めたものだ。
『呪術師の呪力ならば魔石で防げましょう。騎士団の天幕で剣と鎧にしたことを行ってください』
トーイに求められて呪いをはじくように祈ったのだが、五日ほどしか持たないため適度に力を注入しなければならない。
ちなみにトーイは帝国魔術師長官という偉い人だった。エリアナは魔術師部に所属する解呪師となったため、トーイは上司である。
そして当初予定になかったのだが、ルードリックは特別講師として潜入することになった。
婚約者のいないアルディナル大公殿下は、上級令息を篭絡しまくるグレッタ男爵令嬢のターゲットになりうる。陛下からおとりになるように命じられたのだった。