護国の聖女でしたが別人にされて追放されたので、隣国で第二の人生はじめます!
授業中、そっと監視していたが異常は感じられなかった。
「今の時間、グレッタさんはどちらに?」
「多分生徒会室ですわ。皇子殿下のおそばにいらっしゃるかと」
「いらっしゃるんじゃなくて、くっついてるのよ。まったく汚らわしいですわ」
彼女たちに「お話ありがとう」と礼を言って、マクスを探しに廊下に出た。エリアナと同じく情報収集をしているはずだ。
話してくれた彼女たちは侯爵家と伯爵家の令嬢たちだった。
男爵家の、しかも平民出身の養女が太刀打ちできる相手ではないだろう。アカデミーの中は身分の垣根がないとはいえ言動が過激すぎる。
──イメージと違うわ。
陛下が話していた『やさしい』とか『いじらしい』部分など微塵もないようだ。
卒業してしまえば絶対的な階級社会で生きねばならないのに、同性の敵ばかり作ってどうするのだ。
万が一皇子殿下の妃になったとしても、精神系の呪物で得た愛情は本物ではない。ずっと呪物に頼り続けるつもりならば浅はかだ。
精神系呪物を使い続ければ対象者は廃人になるし、呪いは使用者に返るとトーイから習っている。
だから帝国法で禁止されているのだと。
──禁を破れば重罪って、知らないのかしら?
「お馬鹿さんなんでしょう」
急に背後から声がして、エリアナはびくっとして振り返った。
「マクス……! もしかして声に出てました?」
「いえ、でもエリアナさまのお考えは、このマクスに伝わってきますので」
「そ、そうなの」
エリアナはひくっと頬を引きつらせた。
──私って、そんなにわかりやすいのかしら。
脳内お見通しなのは、ちょっと……いやかなり困る。
「冗談ですよ。声に出てました」
マクスはニカっとして、「それより」と声を潜めた。
「さきほど、グレッタが私に接触してきました」
「どんな感じでした?」