護国の聖女でしたが別人にされて追放されたので、隣国で第二の人生はじめます!

黒獅子騎士団


──いつまで、どこまで歩けばいいの……。

 追放されてからなにも口にしていない。空腹と渇きと途方もなく続く木々が、エリアナの気力を奪っていった。
 昼は魔物の出現におびえながらも休まず歩き、夜は岩陰や茂みに身を潜めて休んだ。もう三日もあるいているというのに、一向に森から出られる気配がない。
 そもそも隣国に向かっているのかも不明だ。

 ──別人……第二の人生……自由……。

 喜んだのはいいけれど、このままでは死の森という名のごとくに、エリアナの命が奪われてしまうことになる。

 森を越えるのは甘くなかった。
 果物でも水でも、なにか口にしなければ死あるのみ。
 そう思うものの、木の実はなく、泉も川もない。

 今はまだ、なけなしの力で瘴気をブロックできているけれど、それもいつまで持つかわからない。

 ──疲れ切っていても進まなくちゃ。

 そうして頑張った四日目。
 とうとう気力も体力も尽きて一歩も動けなくなってしまった。

──少しだけ休もう。そうしたら再び動く気力がわくはずだから……。

 葉の茂った木の根元に座り込んだエリアナは目を閉じ、意識を手放してしまった。

 どれだけ眠っていたのか、ふと目が覚めたエリアナは重い瞼を少し開けてぼんやりと目に映る輪郭を見つめた。
 なにやら黒いものがもそもそと動いている。さらさらと揺れる黒い髪のようなものと、パクパクと動く赤っぽい口のようなもの。

 ──なにこれ、人のような……?
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