護国の聖女でしたが別人にされて追放されたので、隣国で第二の人生はじめます!
「初対面なのに不気味なほどに馴れ馴れしいです。恥じらったような笑顔で近づいてきて『アカデミーのこと教えてあげる!』と腕に触ってきました。もちろんすっぱり断りましたが、鳥肌が立ちましたよ」
そういって体をさすり、心底嫌そうに顔をゆがめた。
「ピアスの反応は、その、痛くありませんでしたか?」
「まったく。耳たぶがぴちっとするくらいで。殿下の雷撃に比べればこんなの羽毛で撫でられたようなもんですよ」
──殿下の雷撃を受けたことがあるの!?
エリアナは衝撃を受けるが、マクスはどやあぁっと胸を張っている。
「殿下と一緒に騎士団で活動してると、たまに雷撃の余波を食らうことがあるんですよ」
雷撃は罪を犯した者への罰は無論だが、無礼な態度をとった者へのおしおきもあると、平然と語る。
「殿下のおしおきは冷酷無慈悲ですから、あのスルバス団長もトーイさんも震え上がるほどです」
「……そう、とりあえず、ピアスが痛くないならよかった……」
──なんてことなの。
恐ろしいといううわさは伊達ではないのだ。
皇宮ではずっと幼児のままだったし、かわいらしい姿に慣れてしまっていたからギャップが激しすぎる。
──やっぱり怒らせないようにしないと!
それはさておき、ピアスが反応したならば呪いの力が出ていたことになる。
「洗脳、魅了、支配、なんの呪いかしら。使っているところを見たり、身上書の方たちに会えるといいのだけど」
「それなら皇子殿下か宰相子息がいいですね。陛下たちに〝くれぐれも〟と頼まれていますから」
ふたりとも最上級生で生徒会役員だ。簡単に会える人たちではない。グレッタはどうやって近づいて篭絡したのか。
「とにかく、殿下に面会を取りついでもらいましょう」
そう決めて特別講師の部屋に行こうとしたのだが、進む廊下の先で騒ぎが起こっていて足を止める。