護国の聖女でしたが別人にされて追放されたので、隣国で第二の人生はじめます!
「いい加減になさい!」
凛と叱責して騒ぎに割って入ったのは銀髪縦ロールヘアの女生徒だった。
厳しい顔つきで堂々とした姿。周りの反応から公爵令嬢のアマンダであるとわかる。
「わたくしもグレッタさまの素行にはたびたび苦言を呈しております。婚約者に対するあなたの暴言は見逃せませんわ」
毅然とした物言いに子息たちがひるんでいるが、騎士団長子息は不穏な気配をかもし出している。
「彼女がおっしゃることは真実です。あなた方はご存じないようですけれど、件の令嬢はさめざめと泣くような柔なおかたではございません。わたくしたちに、口に出すのも恥ずかしいような暴言を吐いてあざ笑います」
「たわごとを言うな!」
怒鳴ったのは騎士団長子息だ。
「たわごとではございません」
「グレッタはそんな子じゃない! この俺に『いつも頑張っていて素敵です』『汗は努力の結晶です』と言ってくれた。やさしくて天使のような子なんだ!」
「そんな当たり前の言葉、わたくしでも言えますわ」
「なにをっ!?」
騎士団長子息は怒りのボルテージが上がっていて顔も真っ赤だ。
「っ、エリアナさま少々おそばを離れます」
早口で言いざまにマクスは素早く動き、手を上げる騎士団長子息とアマンダの間に割って入った。振り上げられていた腕をつかんですごむ。
「なにしてんだ。頭冷やせ」
「なんだ貴様は! 放せ!」
騎士団長子息が暴れているが、マクスに掴まれている腕はびくとも動かない。
驚いて身動きができないアマンダの肩に、エリアナはそっと触れた。落ち着けるように癒しの力を送り込む。
「お怪我はありませんか?」
「え、ええ、平気ですわ」
緊張していた顔が少し緩んだ。
その間もマクスと騎士団長子息、宰相子息と婚約者の攻防が続いていた。廊下は混とんとしている。
「廊下でなにを騒いでいるんだ」