護国の聖女でしたが別人にされて追放されたので、隣国で第二の人生はじめます!
ルードリックの部屋に落ち着くなり、エリアナはずばっと切り出した。
「殿下、彼らは下僕一号と二号でした」
心なしかルードリックの体がカクッとしたように見える。
「今、なんて言った? 下僕?」
エリアナの突拍子もない報告に、ルードリックは額に手をやる。
「すみません、私もよくわかっていないんですけど、みえたんです。文字が、宰相子息の頭の上にはっきり『下僕二号』、騎士団長子息は『下僕一号』って」
「呪いが文字で見えるとは……。ナギの解呪でレベルアップしたということか? すごいな」
「……げぼく……」
驚いた顔をしていたマクスだったがぷっと噴き出し、壁に向かって手を突いて必死に笑いをこらえている。
「不謹慎にも笑ってすみません。あまりにもそのまんまだったんで」
マクスが目じりの涙を拭いた。
反してルードリックは苦い顔をしている。
「それならば皇子殿下もグレッタの下僕なのか。まずいな……ほかの連中には?」
「えっと、下僕二十号、下僕十五号の人がいました」
あのとき周囲にいた生徒のうち、数人の頭上にも浮かんでいた赤い文字。
彼らは薄かったり文字が崩れて消えかかったりしていたから、連続して呪いをかけられてはいない。
色が赤いのは魅了系の呪いだからだろう。数字から推測するに、グレッタの被害者はかなりの数だと思われる。
「ハーレムでも作るつもりか。とんだ性悪だな」
「とんでもないあばずれですね」
ルードリックとマクスが吐き捨てた。
「全員一気に解呪したいですね。呪物も壊さねばなりませんが、そうなるとエリアナさまの負担が大きいです」
マクスが真剣な顔で意見を述べ、エリアナも同意する。ひとりずつ解呪していくのは時間と労力がかかる。
「それならば策がある。エリアナがすべてをする必要はない。婚約者をないがしろにした者はきついお灸をすえてやろう」
ルードリックは不敵に笑った。