護国の聖女でしたが別人にされて追放されたので、隣国で第二の人生はじめます!
剣術大会のパーティは制服参加で、ドレスアップするのは卒業パーティのみという。
──楽でよかった。
伯爵家のパーティ準備は肌をつやつやに磨くことから始まったのだ。レディのドレスアップは時間と労力が半端ではない。
通常は婚約者がいればパートナーとして参加するのだろうが、例の解呪対象者たちはグレッタを囲んで談笑している。
そういえば公爵子息はアマンダと双子だそうだ。
廊下事件のあと何度か会ううちに、「双子の兄が下僕だなんて情けないわ」と恥ずかしそうに教えてくれたのだった。
公爵子息は『下僕十二号』
わりと簡単に篭絡されているから、号数は内緒にしてある。
「あいつ、打った腹が痛いんだろうな」
笑顔がぎこちない騎士団長子息を眺めるマクスが黒い顔で笑った。
「お、始めるみたいですよ」
パーティ会場の中央をアマンダと四人の令嬢が上手に進んでいくところだ。目標はグレッタと解呪対象者たち。
そのただならに雰囲気を感じ取った参加者たちがざわめきながら注目した。
──とうとう始まる!
「お兄さま、小公爵ともあろうお方が、なぜ婚約者を放置して男爵令嬢などとご一緒しているのですか!」
アマンダが切り出すと、笑顔だったグレッタがおびえたそぶりを見せて皇子殿下の腕をぎゅっとつかんだ。
「殿下ぁ、怖いですぅぅ……」
しおらしくうつむいている姿は気弱に見えなくもない。