護国の聖女でしたが別人にされて追放されたので、隣国で第二の人生はじめます!
ぎゅ~むっと頬を抓ると、口からぽろっと呪物が出た。
グレッタは白目を剥いているが、ただれた肌はどんどんきれいになっていく。
「飴玉?」
「そのようです。部屋を捜索しましょう。残りがありそうです」
マクスがハンカチで飴玉をくるみ、エリアナは子息たちに協力を仰ぎ、ぐったりしているグレッタを椅子に腰かけさせた。
彼女が失神しているのは口の中で呪いがはじけたためだろう。
「飴玉だなんて。呪物を体に取り込むなんて正気ではありませんわね」
アマンダが顔をゆがめる。
「知識がなかったのでしょう」
エリアナは苦笑していると、皇子殿下が「すまない」と声をかけてきた。
「記憶があいまいなのだが、きみたちに世話をかけたようだ。ピンクの髪のきみは何者なのだ?」
「皇子殿下、はじめてお目にかかります。解呪師のエリアナと申します。陛下から依頼を受けてまいりました」
「解呪師……なんということだ。私は呪われていたのか?」
「はい。魅了の呪いでした。でも、もう大丈夫でございます」
エリアナはにっこりと笑った。
皇子殿下はアマンダから仔細を聞き、衝撃を受けて椅子にへたり込んでしまった。ほかの子息たちも同様で頭を抱えている。
宰相子息は婚約者に背中を撫でられている。なんとか、婚約破棄の危機を免れたようである。
──よかった。宰相さん、よかったですよ!
エリアナとしても良い報告となるので、うれしい限りだ。
警備隊を伴ったルードリックが騒然とした場を仕切り沈めている。
グレッタは警備隊が連れて行き、しかるべき処罰が下されるだろう。エリアナの仕事はここまでだ。
初仕事がうまくいってよかったと、エリアナはホッと息をついた。