護国の聖女でしたが別人にされて追放されたので、隣国で第二の人生はじめます!

帝国の解呪師・エリアナです


 アカデミーでの解呪が無事に済み、エリアナたちはパール宮殿に戻った。

 ルードリックは幼児姿で新聞を読んでいるところだ。
 新聞の見出しはグレッタの篭絡事件一色である。
 アカデミーの生徒たちに関しては帝国の未成年保護法に守られているため、被害者たちの実名報道はされていない。

「謎の解呪師か。実名も容姿もかくして正解だったな」

 小さな手で一生懸命新聞をたたむ姿は、大人びた発言とのギャップが激しい。

「殿下、エリアナさまの爵位授与式にも子ども姿で参加なさるのですか?」

 マクスの問いにルードリックは「そうだな……」と考えこむ。

 アカデミーの事件を解決したエリアナには、約束通りに爵位が授与される。その式には貴族方が招待され、盛大なパーティも開かれるそうなのだ。

 宮殿には陛下の皇妃候補たちが滞在しているから、パーティに参加するに違いない。皇妃候補とはいえ、選ばれなければルードリックが最良の婿候補となるのが貴族事情である。
 到着時の騒ぎを思えば、女性が苦手なルードリックは話しかけられるのも嫌だろう。

「……大公姿で参加だ。エリアナは俺の専属侍女だからエスコートする」

 ──専属侍女

 そういわれればそうだ。
 解呪師として魔術部に登録されたが、大公家の侍女は辞めていない。というか専属を解かれていない。

 自分の落ち着く先がアルディナルだという安心感に満たされる。
 実はかなり不安だったのだと、自分でも思い知った。
 解呪師として皇都に残るのか。どこで生活するのか。人、土地、知らないことばかりだ。それが一気に心配なくなって、エリアナはふにゃぁと笑う。

 ──みんなと一緒に帰れる。

「ふっ、しまらない顔だな」
「殿下のおかげです」
「この俺と一緒にいるのに、リラックスするのはきみくらいだ」

 そういわれても、幼児姿のルードリックにはかわいらしさしかない。
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