護国の聖女でしたが別人にされて追放されたので、隣国で第二の人生はじめます!
──それに、膝にいるちび獅子の肉球はぷにぷにしてるもの。
エリアナにとって今の状況はキュートな子だらけなのだ。
「マクスを見ろ。常に緊張している」
エリアナはきょとんとした。
護衛として付いているマクスが警戒を解かないのは当然ではないか?
マクスはいつでもどこでも許可されるまで着席することがない。黒獅子の騎士道精神に満ち溢れた人だし、主である雷撃の大公に畏怖を抱くのは当然と言える。
そこまで考えてハッとする。
──私って、不敬なのでは?
「わ、私も、殿下には恐れおののいています。今は、その、殿下の侍女でいられるのがうれしくて」
そこまで口にして、かあぁっと赤くなった。
──私ってば、なにを言っているの。これじゃ、殿下のそばにいたいって言ってるようなもんじゃない。
それこそ恐れ多い。
今まで呪い軽減のために手を握ったりして近くにいたから、距離感を見誤っているのだ。ルードリックは皇族で、現段階では四番めに皇位継承権のあるひとだと、ラベル宰相から教えられたところなのに。
うつむくとちび獅子がきゅるんとした目でエリアナを見上げていた。
──うっ、ちび獅子ちゃん。慰めてくれるのね。優しい子……。
「申し訳ございません」
「なにを謝っているんだ? 俺は解雇するつもりはないから、解呪師としての活動はアルディナルから行えばいい」
ここまで発展していった会話を聞いていたマクスは、心の中で遠いアルディナルの伯爵家を思っていた。
『父上、兄上、エリアナさまとの婚約はあきらめた方がよさそうです』と。
そして『殿下のお心を捉えるとは、やはり素晴らしいお方だ』と、改めてエリアナへの忠誠心を燃え上がらせたのだった。
「……なんだ? あつくるしいな」
気配を覚ったルードリックがちらりとマクスを見やる。
「申し訳ありません!」