護国の聖女でしたが別人にされて追放されたので、隣国で第二の人生はじめます!
「まあいい。今回はマクスにも褒賞が与えられるそうだ。準備しておけ」
「御意!」
ドアがノックされ、パール宮殿の侍女がエリアナを呼びに来た。
「ドレス試着のお時間でございます。ご案内いたします」
──居心地の悪さから解放される!
エリアナはちび獅子を抱いて素早く立ち上がり、そそくさと侍女のあとに続いた。
ドレス選びのおかげで逃れられた、そのはずだったが。
「待て、そのドレスよりも違うものはないのか」
「こちらなどいかがでしょう?」
なんと試着の部屋にはルードリックと、陛下まで同席したのだった。皇族お抱えのドレスショップのスタッフが二人の要望に応えようとして右往左往している。
「ふむ、着て見せてくれ」
ルードリックがキュピーンと目を光らせるところは、サリナにそっくりである。
「ちびっ子ルードよ。色がわからないのに意外とうるさいのだな? 私は先ほどのドレスも似合っていたと思うぞ」
「俺はデザインにうるさいだけだ。色はヘイブンに任せる。というか、なぜ忙しい陛下殿がここにいるんだ」
「帝国唯一の解呪師殿の衣装なのだ。皇帝が心を砕くのは当然だろう?」
「解呪師以前に俺の侍女だから、俺に任せればいい。さっさと仕事に戻れ。宰相が困っているだろう」
「ルード、ちびっ子の独占欲はよくないぞ。寛大にならねば愛想をつかされる」
そんな会話を耳にしながら着替えていると、スタッフがくすくすと笑う。
「解呪師さまは、高貴な方々に愛されておいでですね」
「あっ、愛だなんて。そっ、そんなことないですっ。私がドレス選びに疎いから、おふたりが気にしてくださってるだけで」
「まあ、それは素敵なご関係ですわ」
「そ……ありがとうございます」
ぷしゅぅっと赤くなった顔を必死に冷やして衣装を身に着け、ふたりの前に立つとじっと見つめられる。
──恥ずかしいよ。