護国の聖女でしたが別人にされて追放されたので、隣国で第二の人生はじめます!
微笑んだ彼は、手のひらで口元を押さえている男性に対しても、エリアナと同じことをした。
「だいたい、団長は接近しすぎなんですよ」
トーイが苦言を呈すると、周囲の気配がざわっとした。
「そうですよ!」
急に声が上がり、驚いたエリアナはきょろきょろと目を向けた。
そうするとこの場所が大きな天幕の中であり、自分がベッドに寝かされていて、ほかにも人がたくさんいることがわかった。
──私は、この方たちに助けられたのね……?
トーイに団長と呼ばれた男性が、同じ服装をしているほかの男性たちに詰め寄られている。
「若い娘さんの顔を覗き込むなんて」
「俺達には近づくなと、さんざんくぎを刺しておきながら」
「ご自分は良いんですね!」
などと口々に責め立てられている。
団長は「いや、俺は、まぶたが動いた気がしたから、目覚めたのか確認しようと……」などと、おろおろと口にしている。
大きな体つきの屈強で立派そうな男性が、部下と思われる人たちに責められているのがおかしくて、エリアナは思わずクスッと笑みをこぼした。
天幕の隅には剣と鎧のような装備が置いてあるのも見える。ここが騎士団の陣営であることがわかった。
──まだ、死の森の中なのかも。それとも。
「あの、騎士さま? ここはどこなのでしょうか」
団長を中心にワイワイしている彼らに声をかけると、一気に静まった。
神妙な面持ちになった団長がエリアナのもとに近づき、そばに置いてあった椅子に座った。トーイも団長のそばに立つ。
「我らはワノグニー帝国、アルディナル大公領の黒獅子騎士団。俺は団長のスルバスだ。ここは死の森のはずれで、あなたが森の中で倒れていたのを部下が発見し、保護した」