護国の聖女でしたが別人にされて追放されたので、隣国で第二の人生はじめます!

「そうか……これが、きみの色なのか」

 ずっと求めていた色のある世界。美しいものを感じられる心。
 今までに味わってきた辛苦が雪解けていく。

 ──最初に彼女の色を見られてよかった。

 エリアナの頬にそっと触れる。
 今まで白く見えていた肌はほのかに色づいていて美しく、唇も触れたいほどに愛らしい。

 ──エリアナの肌はこんなにも繊細な色合いをしていたのか。

 周りの景色も様々な色であふれていて、目が痛いほどだ。

 ──だがこれも完全に呪いが解けてはいないだろう。

 試しに手を離してみると、すんとモノクロの世界に戻る。

「どうやら、軽減しているだけのようだ。きみと接触しているときのみ色が見える」
「……そうですか」

 エリアナは残念そうにしゅんとするが、ルードリックにとっては吉兆でしかない。

「ますます手放せなくなったな」

 ぼそっとつぶやいた声はエリアナに届いたか。

 ──ぐすんと鼻をすすっている。聞こえてないようだ。

「泣くな。いつか完全に解呪できるという希望ができたんだ」
「そうですね。いつか、必ず!」

 きりっと顔を引き締めるエリアナの手を再度取り、色に満ちた世界を味わう。

「さあ、授与式に行こう」

 廊下ではマクスが控えていた。
 半解呪のことは、彼にはまだ伝えないほうがいいだろう。

「アルディナル大公殿下、解呪師エリアナ殿、騎士マクス・コール卿のご入場です」

 授与式の会場は色と光に溢れていた。


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