護国の聖女でしたが別人にされて追放されたので、隣国で第二の人生はじめます!

 彼の雰囲気が柔らかくて、今まで以上にキラキラと輝いて見える。じっと見つめられるとまぶしくてドキドキしてしまう。
 ルードリックの心情が表に出ているのだ。
 解呪の可能性が見えてうれしくてたまらないのだろう。エリアナならば、「ヤッホイ!」と叫んで天に腕を突き上げている。

 ──さすが殿下。感情のコントロールが素晴らしいわ。

 完璧な解呪に向けて、これからもルードリックをサポートしていこう。改めて決心していた。
 曲が終わり、ルードリックが名残惜し気に手を離す。

「エリアナさま、私と踊っていただけますか」

 マクスの誘いを受けて、彼の手を取った。
 屈強の騎士のイメージが強い彼だけど、ダンスのリードは柔らかい。

「エリアナさま、今回はすごくいい経験をさせてもらいました。解呪師として活動するとき、私を護衛として使ってください。殿下にはもうお話しして許可を頂いています」
「ありがとう。アカデミーでもマクスが一緒にいたから怖くなかったんです。すごく心強くて、これからもお願いします」

 笑いかけると、マクスは照れたように笑った。

 ──マクスは私の初めての友人だわ。

 曲が終わるとすかさず貴族子息がダンスの手を伸ばしてきた。

 ──えっ、どうしよう。

 ずらっと並んだ手のうち、どれを取るべきかわからない。
 グレッタ事件の影響で、みんな素敵な殿方だけれど婚約者はいないのかしらと思ってしまう。

「失礼」

 低く響いた声はルードリックだ。びくっと肩を揺らした子息たちがさっと身を避ける。

「すまないが連れて行くよ。彼女は疲れているようだから」

 困っているのを見かねて連れ出してくれるのだ。エリアナは感謝を込めて差し出されているルードリックの手を取った。
 彼の背後では令嬢たちがそわそわした感じで見つめているが、それを華麗に無視して導かれていった先はテラスだった。

「ここならゆっくりできる」

 風が涼やかで心地がいい。夜の宮殿の庭には月の明かりがさしていて、闇と光の競演が美しく映る。
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