護国の聖女でしたが別人にされて追放されたので、隣国で第二の人生はじめます!
エリアナと手をつないでいれば、ルードリックの目も同じ景色を映しているのだ。
それがうれしい。
「そういえば殿下、ちび獅子……ナギュルスの瞳は赤いんですよ。もうご覧になりましたか?」
「見た。あの色を赤というのか。ほんとうに不思議だ。世界は、こんなにたくさんの色であふれていたとは」
「これからもいろんな色を見られますよ。この私がそうさせてあげますから」
自信満々とはいかないけれど、絶対に失明の呪いを解いてみせよう。
「期待してもいいのだろうか」
「殿下。私は帝国の解呪師、エリアナですよ」
きりっとして胸を張るとルードリックは一瞬きょとんとして「はははっ」と声を立てて笑った。
──えっ、笑うところですか?
けれどルードリックがこんなふうに笑うのは、初めてではないだろうか。幼いころから今までの間、ずっとつらい思いをしてきたのだろうから。
「はははっ、かっこいいな。よろしく頼むよ。最強の解呪師、エリアナ殿」
「お任せください」
「こんなにか弱い女性が頼りになると思ったのは初めてだ」
ルードリックは楽しそうにしている。その笑顔が月から舞い降りた天使のようにかわいらしく見える。
夜のテラスでは、楽しく語り合う二人を祝福するように月が照らしていた。
第一部 完