護国の聖女でしたが別人にされて追放されたので、隣国で第二の人生はじめます!
スルバスの後を引き受けてトーイが口を開く。
「あなたはこの死の森の中で、瘴気除けの装備もないのに驚くほど瘴気に毒されていませんでした。しかも魔物が現れる壮絶な環境のこの森で、傷ひとつない状態で倒れていたんです。あなたは何者で、どこからきたのですか?」
発見したときの状態を述べるトーイの表情も口調も、癒し魔法をかけてくれた時とは違って警戒心があらわになっている。
エリアナは返答に詰まった。
正直に追放された経緯を話すべきか。けれど魂が入れ替えられてしまったなど、到底信じられないことだろう。
なにより、エリアナ自身が身に起こったことをまったく理解できていないのだ。
わかっているのは、ズルイータ公爵令嬢と入れ替わってしまったようだ、ということだけ。彼らに説明できることはなにもない。
「私の名前はエリアナ……わからないんです。どうしてこうなってしまったのか」
「覚えていない、ということですか?」
「……はい。気が付いたら死の森にいました」
「無傷だったことも説明できませんか?」
「え……っと」
──どうしよう?
「発見時、体が光っていたという情報もある。やはりエルフが人に化けているのか!? トーイは〝人だ〟と診断したが、奴らは巧妙だと聞く。騙されても不思議じゃない」
立ち上がったスルバスが腰のものに手をかけるから、エリアナはギョッとした。助かったと思ったのに、命の危機である。
「あ、それは、あの……少しだけの魔力みたいな? ものがありまして?」
「なんで疑問形なんです?」
トーイに問われてエリアナは困ったように笑い、眉を下げた。
秘密にしておきたかったけれど、彼らの疑いを払しょくしなければ人外の生物として捕縛され、討伐されかねない。
「これがなんなのか、不明なんです」
エリアナは集中して手のひらに力を集める。
手のひらからしゅわ~っと光が放たれると、団長をはじめとする騎士たちの顔が驚きに変わった。