護国の聖女でしたが別人にされて追放されたので、隣国で第二の人生はじめます!
「おぉ」という声も上がる。
「俺が見たのはこの光です」
最初にエリアナを発見したという騎士が前に進み出た。
「間違いありません」
「木漏れ日ではなかったということか。人が光るなどありえないと思っていたんだが」
スルバスがうなるように言い、顎をさすった。
ついで誰かがぼそっとつぶやく。
「なんてあたたかい光なんだ……」
エリアナの顔を明るく照らすほどの光の派手さに反比例するかの如く、手のひらの上に、しょぼ……と、小さな光の玉ができあがった。
──何度見てもしょぼいけれど、これが私を守ってくれた、大切な光。
その直径一センチほどの光の玉を見て、トーイが目を瞠っている。
「出来上がったこれを、全身を包むように広げるイメージをしただけなんです」
光の玉が極々薄い膜になり、服のように体を包む。
エリアナがナンザイ王国で張っていた結界と同じ仕組みだ。
聖女として作っていた結界よりもはるかにもろいけれど、これでも十分に瘴気をはじいてくれたのだ。
ただ膜が薄すぎるためにすぐに破れてしまい、日に何度も張りなおす必要があった。
体が光っているのを見たというのは、エリアナの生存本能が体を守るため、無意識に膜を張りなおしていたのかもしれない。
「これは……魔力ではなく、神力ではないでしょうか。エネルギーの使い方が違います」
トーイは信じられないといった面持ちだ。
「神力?」
スルバスが問いかけると、トーイはうなずいた。
「私たち魔術師が力を使う場合、体内に宿っている魔力の媒体となる杖を使って魔法陣を構築しなければなりません」
トーイは杖をコンッと床に突き、手のひらに小さな魔法陣を描いた。それは、さきほど施した癒し魔法だという。