護国の聖女でしたが別人にされて追放されたので、隣国で第二の人生はじめます!
「エリアナ、外に来られるか? 団員達と一緒でよければ、ともに火を囲んで食べてもらいたいんだが」
スルバスが入り口の膜をめくると、天幕の中になにかが焼けたにおいが漂ってきた。そのあまりにも香ばしいにおいに、エリアナはごくんと喉を鳴らした。
スルバスは、騎士たちがエリアナとの食事を希望したと、ばつが悪そうな顔をする。
「一緒に楽しみたいそうだ。悪い奴らじゃないし、嫌だなと思ったら席を外していいから」
「いえ、ぜひ。でも腹ペコで力が出ないので、手伝っていただけますか?」
照れながらも手を貸してくれるように頼むと、スルバスは武骨な手でエリアナの手を取った。
騎士のごつごつした手。スルバスの年齢は、エリアナくらいの年の子どもがいてもおかしくないと思える。
手以外にも歴戦を思わせる傷あとが目立つ。今までどれほどの魔物たちを倒してきたのか。そんな剛腕で強固な手なのに、エリアナに伝わってくるのは優しさと気遣いだった。
「すまなかった。まさか四日間も森をさまよい、何も食べてないとは……遠征中のために簡単なものしか用意できていないが、たくさん食べてくれ」
天幕の外は夜の闇が下りていた。
焚火がたかれ、木の棒に刺した肉と根菜が豪快に焼かれている。その火を囲むように、騎士たちが座っていた。
エリアナが現れると「おぉ~」と歓声が上がる。
「こっちに、ここに座ってください」
嬉々として手招きしているのは、エリアナを見つけて運んでくれた騎士たちの一人だという。
「私を見つけてくれて、ありがとうございます。命の恩人です」
礼を言うと、彼は「とんでもないっす」と照れた。
空けられている席にスルバスと一緒に座ると、騎士たちが「命をつなぐ糧に感謝を! いただきます!」と声を合わせる。
わいわいと食事が始まり、「どうぞ」とスルバスが取ってくれたのは、拳よりも大きな肉の塊だった。