護国の聖女でしたが別人にされて追放されたので、隣国で第二の人生はじめます!

「エリアナ、外に来られるか? 団員達と一緒でよければ、ともに火を囲んで食べてもらいたいんだが」

 スルバスが入り口の膜をめくると、天幕の中になにかが焼けたにおいが漂ってきた。そのあまりにも香ばしいにおいに、エリアナはごくんと喉を鳴らした。

 スルバスは、騎士たちがエリアナとの食事を希望したと、ばつが悪そうな顔をする。

「一緒に楽しみたいそうだ。悪い奴らじゃないし、嫌だなと思ったら席を外していいから」
「いえ、ぜひ。でも腹ペコで力が出ないので、手伝っていただけますか?」

 照れながらも手を貸してくれるように頼むと、スルバスは武骨な手でエリアナの手を取った。
 騎士のごつごつした手。スルバスの年齢は、エリアナくらいの年の子どもがいてもおかしくないと思える。

 手以外にも歴戦を思わせる傷あとが目立つ。今までどれほどの魔物たちを倒してきたのか。そんな剛腕で強固な手なのに、エリアナに伝わってくるのは優しさと気遣いだった。

「すまなかった。まさか四日間も森をさまよい、何も食べてないとは……遠征中のために簡単なものしか用意できていないが、たくさん食べてくれ」

 天幕の外は夜の闇が下りていた。

 焚火がたかれ、木の棒に刺した肉と根菜が豪快に焼かれている。その火を囲むように、騎士たちが座っていた。
 エリアナが現れると「おぉ~」と歓声が上がる。

「こっちに、ここに座ってください」

 嬉々として手招きしているのは、エリアナを見つけて運んでくれた騎士たちの一人だという。

「私を見つけてくれて、ありがとうございます。命の恩人です」

 礼を言うと、彼は「とんでもないっす」と照れた。

 空けられている席にスルバスと一緒に座ると、騎士たちが「命をつなぐ糧に感謝を! いただきます!」と声を合わせる。

 わいわいと食事が始まり、「どうぞ」とスルバスが取ってくれたのは、拳よりも大きな肉の塊だった。
< 17 / 134 >

この作品をシェア

pagetop