護国の聖女でしたが別人にされて追放されたので、隣国で第二の人生はじめます!
結界の石柱の浄化は聖女の仕事のなかでも大仕事なので、力の消耗が激しい。一本だけならばそれほどでもないが、今日はすでに二本も作業してるのだ。
「終わったならすぐに動いてください。スケジュールが押しているんです。すぐに次の場所に行かねばなりません」
「待ってください、神官長。朝にも伝えたように、昨夜妃教育が遅くまであったので、寝不足なんです。それに浄化したばかりで、力を取り戻さないとなりません。少し休めませんか」
エリアナが懇願すると、神官長は「ちっ」と舌打ちをする。
「我らに口答えをするとは。妃教育を受けているだけなのに、もう王太子妃面ですか。聖力がなければただの孤児なのに、身の程をわきまえてほしいものですな」
じろっとにらまれ、エリアナはぐっと言葉を飲み込んだ。
彼ら神官は貴族生まれの者が多く、選民意識が高い。孤児だったエリアナが聖女の力を有したことが気に入らないのだ。
「王太子殿下にも聖女の仕事をまっとうさせるように命じられていますのに、遅れたら叱られるでしょう」
「でも……」
通常なら浄化の後は部屋で休むことができるのだが、今日はエリアナの支度が遅れたためにスケジュールが押しているという。
エリアナはいつものように出かける準備をしたが、遅れたのは神官たちだったというのに。
いつもエリアナのせいになる。理不尽だがそれを言ったところでなにも変わらない。それどころか罵詈雑言が増えるだけだ。
エリアナはぐっと唇を結んだ。
「しかたありません。我らも食事しなければなりませんし、いつもの部屋でお休みください。行きましょう」
神官たちは「やれやれ」といった態度で階段を降りていき、エリアナも彼らのあとにとぼとぼと続いた。
神官たちと別れていつもの部屋に入ってソファに座ると、塔に勤める使用人が食事を運んできた。