護国の聖女でしたが別人にされて追放されたので、隣国で第二の人生はじめます!
森を渡ることに必死で、帝国に入ってからの生活をどうするか考えることもできなかった。
生活基盤がなければ、自由を謳歌することもできない。それ以前に、入国さえもできないかもしれない。
エリアナの顔がサーっと青ざめた。
無一文で、どこの誰ともいえない自分を、だれが受け入れてくれるだろうか。
森を越えることができたというのに、さっそく詰んでいる。
「どうしましょう……」
「食事をしてるとこ見て思ったんだが、エリアナの所作は平民のそれとは違うし、服も、きれいな手もそうだ。貴族の生まれ、おそらく、隣国……ナンザイ王国の没落貴族かと思うんだが」
スルバスが顎をさすりながら考え込んでいる。
エリアナは無意識だが、公爵令嬢として身についている美しい所作が自然に出ているのだろうか。
「……そうかもしれません。あの、ワノグニーでなにか仕事ができればいいなと……なんでもしますから、騎士団で下働きさせてもらえませんか。掃除ならできると思いますので!」
神殿では毎日、早朝から自分の部屋と祈りの場の掃除をしていたのだ。どんな物でもピカピカに磨く自信がある。
拳を握って「ふんすっ」と鼻息も荒くアピールすると、スルバスは一瞬きょとんとして、ぷっと噴き出した。
「トーイがエリアナのことも報告している。騎士団で働くのもいいが、エリアナの今後は、領主である殿下がお決めになるだろう」
「……もしかして、国に入れてもらえないとか、ありえます……?」
「心配するな、悪いようにはされないだろうから」
まずは身柄の保護が妥当だろうと、ニカッと歯を見せるスルバスの顔が、エリアナの不安を払しょくしてくれる。