護国の聖女でしたが別人にされて追放されたので、隣国で第二の人生はじめます!

 それでも〝死の森を越えてきた〟という事実は伏されている。知られていたら見る目が変わり、気軽に話しかけてもらえないに違いない。

「はい。だってすごく天気がいいんですもの」

 空は青く、まばゆいほどの陽光がある。空気はさわやかでとても気持ちがいい日だ。

 にこにこしているエリアナを、侍従は目を細めて見つめている。

「エリアナがきてから、なんだか城内が明るくなった気がするよ」
「それは、私がピンク色の髪だから?」

 冗談めかすと侍従は「あははっ」と笑った。

「そうかもしれないな。エリアナはアルディナルにはいない髪色だから、華やかだよね。そのせいかな、エリアナの周りが明るく見えるんだ」

 帝国よりも長い歴史を持つという荘厳なアルディナル城は、よく言えば古めかしく、悪く言えば暗く打ち沈んでいる。
 そのうえ使用人たちの髪色は黒か茶が多いし制服も黒で、全体的に地味だ。代々領主の意向により、城の装飾も庭の有り様もできるだけ色味を抑えているから、モノクロ城ともよばれているという。

「暗い色味ばかりのせいか、気が滅入ることも多かったんだ」
「そうなんですか」

 エリアナは天井を見上げた。色味のせいではない。この城の天井近くの空気は、澱みがあって重くるしい。
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