護国の聖女でしたが別人にされて追放されたので、隣国で第二の人生はじめます!
「迷子になられたのなら、私がお助けしましょうか?」
「無礼な。迷子になどなっていない」
ぷいっとそっぽを向く。
──強がっちゃってる。かわいい。
「では、あそこでなにをされていたんですか?」
「探していた」
ぽそっとつぶやいたあと、急にハッとしたように背後を見た。直後、慌てた様子でエリアナを見上げる。
「おい、俺を隠せ」
「はい? 隠すって、どう……」
「追われている」
鬼気迫る顔つきがエリアナを緊張させる。
「追われてるって、相手は悪者ですか!?」
「そうだ」
警備のしっかりしているはずの城に悪者がいるなんて驚きを隠せない。後継者争いとか、貴族なりの事情があるのだろうか。
助けなければ!
エリアナは令息に届くように、懸命に手を伸ばした。
「手を、こちらに! 早く!」
ぐっと背伸びした令息がエリアナの手を掴んだ。そのとき。
パチン。
なにかがはじけるような音がして、ぴりっと痛みが走り、エリアナは思わず目を閉じた。
──いったいなんなの?
「大丈夫ですか」
令息に声をかけながら再び目を開けると、エリアナの目の前に、切れ切れの布地を体に掛けた金髪の若い男性が立っていた。
「は?」
「え?」
お互いに驚き固まっている。
男性はエリアナの顔を凝視し、しっかりと手を握っていた。
「誰……男の子は? 男の子はどこに? さっきまで手を掴んでいたご令息は?」
追われていると言った令息が忽然と消えてしまい、半裸の男性にすり替わってしまった。エリアナはパニックである。
──移動魔法なの? 男の子が悪者にさらわれたの? ということは、この人は悪者?
「どうしよう!」
焦りながらも、城にいるだろうトーイに連絡しようと考え至るが、居場所と連絡手段が不明だ。
エリアナの背中に冷や汗がたらりと流れた。