護国の聖女でしたが別人にされて追放されたので、隣国で第二の人生はじめます!

 貴族のご子息が行方不明になった。その場に居合わせて守れなかったエリアナの責任は重いだろう。
 両親ばかりか殿下の怒りをも買い、雷撃を受けることは必至だ。ぞくっと震える。

「きみは、何者だ?」

 男性の声は呆然としているが、瞳の力は強い。

「あなたこそ、何者ですか!」

 城の中にいるエリアナよりも、外にいる彼の目線の位置が上だ。かなり身長が高い。しかも筋肉質な体つきは、かなり鍛えていると思われる。

 しかし切れ切れの布しか身に着けていないとは、なんたる変人だろうか。
 普段のエリアナならば男性の裸体を見て「きゃあっ」と叫んで目を覆うのだが、ありえない状況に仰天している今はそれどころではない。

「手を離してください」

 毅然とするも、男性は手を離さない。

「それは無理だ」

 振り払おうとしても、しっかり握られた手はくっついてしまったように離れない。

「私は、男の子を探さなければならないんです!」
「その必要はない。きみが探そうとしているのは、俺だ」
「……はい?」

 エリアナは、頭にも目にも疑問符を浮かべてまじまじと男性を見つめた。

 よくよく観察してみれば、青灰色の瞳は同じで、切れ切れの布は男の子が着ていた服の残骸に見えなくもない。

 ──ということは、ほんとうにこの人が男の子なの!?

 悪者の目を欺くために、魔法で子どもの姿になっていたというのか。それをエリアナが解いてしまったことになる?

「なんてことなの? 信じられない!」
「俺もだ」

 それはそれとして、なぜ、彼はエリアナの手を離さないのか。追われているならば、さっさと逃げればいいではないか。
 理解不能すぎて、脳内では疑問符が躍るばかりだ。
< 28 / 134 >

この作品をシェア

pagetop